機密文書・機密書類の溶解処理
社内の機密文書・機密書類を処分する場合、どのような廃棄方法をすれば、手軽で情報漏洩も起きないのでしょうか?
破棄したい機密文書が少量であれば、シュレッダーが最も簡単で、オフィスだけではなく、店舗や一般家庭でも利用されています。機器本体の安さや、すぐに処理できるスピード感、さらに自分の手で(顧客の目の前で)処理できる安心感もあり、メジャーな処分方法として広く知られています。
しかし、シュレッダーでは紙だけしか細断できないため「バインダーから外す」「ゴムや紐を外す」「ホチキスを外す」など、処分をするための準備作業が発生し、また、処分したい機密文書・機密書類が大量だと、膨大な時間と手間が掛かります。
大量の機密文書・機密書類を一度に廃棄処分したい時には『溶解処理』がおすすめです。
新人Gメン及川
ベテランGメン園川
機密文書の溶解処理とは?
溶解処理とは、紙をリサイクルする工程のひとつで「パルパー」と呼ばれる大型ミキサーのような溶解釜内に、段ボール等でしっかりと梱包されている機密文書・機密書類を未開封のまま投入し、水と鋭い刃、機械の撹拌力で溶かす(厳密に言えば、繊維状になるまでほぐす)方法です。
紙が液状に見えるまで処理され、機密書類の内容は完全に復元・解読が不可能な状態になります。また、開封しないまま箱ごと確実に溶解されるため、セキュリティ面でも安全です。
なお、回収する箱などに入れる際は、バインダー・ファイルごとでも(ホチキス・紐・クリップは外さなくても)問題がなく、分別不要なので、手間が掛かりません。
新人Gメン及川
ベテランGメン園川
業者によっては、溶解処理の終了後に溶解証明書を発行し、確実に機密情報を抹消したことを証明してくれます。処理された紙は、再生紙や段ボールの原料としてリサイクルされるので、環境にもやさしい廃棄方法です。
出典:株式会社ワラケン
※溶解処理を行う機密文書・機密書類は、オフィス等に設置された『カギ付きの専用ボックス(ポストタイプ)』等に投入しておけば業者が回収に来てくれる方法と、専用の段ボール等に詰めて集荷を依頼する方法があります。
たとえば、ヤマト運輸株式会社の溶解処理サービスでは、以下のようなサービスラインナップが用意されています。
出典:ヤマト運輸株式会社
廃棄したい機密文書の量だけではなく、オフィスの設置スペースなども考慮して、回収ボックスのタイプを選びましょう。
溶解処理のメリット・デメリット
企業の機密文書・機密書類を確実に廃棄できる「溶解処理」には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
溶解処理のメリット
- 廃棄する機密文書が大量でも回収ポストに投入する(または回収ボックスに詰める)だけなので簡単
- ホチキスやクリップなどを外す必要がない
- バインダーやファイルと機密書類を分別する必要がない
- 人件費コスト(機密文書を処理するためだけの)が掛からない
- 完全に復元不可能・解読不能な状態にしてもらえる
- シュレッダーのように音を立てない(故障もしない)
- リサイクルされるため、環境にやさしい
溶解処理のデメリット
- 業者によって安全性やセキュリティ対策の差がある
- 自分の目で細断を確認できない
- 運搬時の事故などで情報漏洩してしまうリスクがゼロとは言えない
バインダーやホチキス、クリップなどの分別作業が不要で、大量の書類でも簡単に処理できることが、最も大きなメリットですが、一方で、その場で・すぐに・自分たちの手で処理できないため、リスクが全くのゼロではありません。
どんなに厳重な管理をしていても、深刻な人手不足や多忙な状態が続いている物流・運搬サービスでは、運送中の事故が連日のように報道されており、それは機密処理サービスも例外とは言えません。
実際に、2017年には以下のような事故が発生しています。
NHKは10月24日、クレジットカード情報を含む、最大3267人分の個人情報が流出した可能性があると発表した。放送受信料のクレジットカード継続払いを申し込んだユーザーの書類を廃棄する過程で、1箱分の帳票を紛失していたことが分かったという。
紛失したのは、2011年4月22~28日にNHKのWebサイトからクレジットカード継続払いを申請したユーザーの申し込み書類3306枚(3267人分)。氏名、住所、電話番号、メールアドレスに加え、クレジットカード番号、有効期限が流出した恐れがあるという。
10月16日に「静岡県沼津市内の路上に申し込み書が落ちている」と通報を受けて発覚。NHKが調べたところ、廃棄業者が11日、保存期限が切れた書類をNHKの倉庫(埼玉県川口市)から運び出し静岡県内で溶解処分する途中、1箱分が行方不明になっていたことが分かった。警察に相談し、原因の調査を進めているという。
NHKは24日、当該ユーザーに手紙とメールで謝罪。あらためて業務委託先の個人情報の取り扱い管理を徹底するとしている。「お客さまには、ご心配とご迷惑をおかけしたことを心よりおわび申し上げます」(NHK)
また、大量に廃棄依頼のあった機密文書・機密書類が集まる繁忙期は、長期間、処理されないまま放置される恐れがあるため、溶解処理を依頼する業者を選ぶ際は、安易にコストだけで比較をせず、セキュリティ対策や処理までの流れを確認しましょう。
機密文書・機密書類の溶解処理業者を選ぶポイント
溶解処理だけではなく、シュレッダー処理にも共通して言えることですが、外部の業者に機密文書・機密書類の廃棄を依頼する場合は、セキュリティ対策などをしっかりと行っている業者を選ぶ必要があります。
重要な機密情報が含まれている書類を安心して託せる業者は、どのようなポイントに注視して選べば良いのでしょうか?
情報保護やセキュリティに関する認証
1つ目のポイントは、機密文書・機密書類を廃棄する業者が、情報保護やセキュリティに関する認証を得ているか?を確認することです。
具体的な例を挙げると、情報抹消を唯一の目的として運営する専門工場「抹消仕事人(株式会社日本シュレッダーサービス)」は、機密文書の情報抹消業務を対象として、情報セキュリティマネジメントシステム「ISO/IEC27001」の認証を取得しています。
ただ、認証を取得しているだけではなく、社員に情報セキュリティに関する教育訓練を定期的に実施している業者など、セキュリティ意識の高い業者を選ぶと、さらに安心です。
また、一般的な機密処理・溶解処理では、契約 ⇒ 回収・運搬 ⇒ 実際の溶解処理と、役割ごとに複数の企業にまたがってしまいますが、関係する会社が増えれば増えるほど、機密情報の取り扱いが複雑になり、情報漏洩のリスクが増大します。
委託先監督先が複数社となってしまうと、管理や問い合わせの手間が増える、責任の所在が不明確となる等、様々な問題が出る恐れがあるので、可能であればワンストップで行う業者が良いでしょう。
破棄の証明書
機密文書・機密書類を確実に抹消したことを証明する『溶解証明書』の有無は確認しておきたいポイントの1つです。内容によっては、企業の存続にも関わる情報が含まれているので「回収して終わり」ではなく、間違いなく復元不可能な状態にしたことを証明してもらいましょう。
回収方法や運搬方法
たとえば、段ボールに詰めた機密書類を集荷してもらう際、トラック等に積むまでの間、作業員が他の作業をしていて「そのまま放置されている」など、いくら徹底した溶解処理を行っている業者でも、そこに辿り着く前の段階で、管理を疎かにしていれば、いつ・どのような経路で情報が流出してしまうか分かりません。
また、他の荷物との混載も心配です。
施錠・密封した専用ケースなどを使用している業者を選び、輸送車も現金輸送車のような強固なセキュリティを持つ専用車だと安心です。
溶解処理の手順の確認
ほとんどの業者では、回収された機密文書・機密書類が作業員の目にも触れることなく(開封されることなく)、安全に処理されます。
しかし、溶解処理を初めて依頼する企業にとっては、回収から処理までの手順が分かりません。作業員が箱を開けるのではないか?そこで情報を目にしてしまうのではないか?など、不安や疑問を持つことは当然だと言えます。
溶解処理の手順やセキュリティ対策について、担当者に確認し、その対応もしっかりと確認しましょう。
面倒そうに説明を端折ったり、適当な返答しかないようであれば、危機感に対する温度差があることは否めないので、避けておいた方が無難です。
機密情報の流出は、企業にとって謝罪だけでは済まされない事態に発展してしまうので、信頼できる廃棄業者を選ぶことが重要です。コストも気になるポイントでしょうが、情報が流出してしまうと取り返しがつきません。
回収方法、処理方法、質問等への対応を含め、最も安心してお任せできる業者を選びましょう。
まとめ
日本ネットワークセキュリティ協会の「情報セキュリティインシデントに関する調査報告書」によると、企業の情報漏洩の約30%は、紙媒体が原因で起きています。
また、情報漏洩の多くは印刷物の取り忘れやメールの送信ミス、USBメモリー紛失など、初歩的な人為要因で起きています。
一度でも機密情報が流出してしまうと、猛スピードで日本中に拡散されてしまい、そこから新たな被害が発生してしまいます。
社員教育の徹底やセキュリティ強化と同様に、重要な情報が記載されている機密文書の「処理・廃棄方法」にも気を配り、安心してお願いできる業者を選ぶようにしましょう。
- 機密文書・機密書類は処分の際に情報が流出することもある
- 溶解処理は機密情報が誰の目にも触れない安全な処分方法
- 溶解処理なら一度に大量の機密文書を処理できる
- 溶解処理ならホチキスやバインダーのままでもOK(業者による)
- 運搬時の事故など、リスクは決してゼロではない
- 溶解処理の業者を選ぶ際の4つのポイントはしっかりと確認しておこう
- 業者選びはコストではなく信頼性を優先すること!